第7章 血ぬられた迷宮
「起きててもいいのか?寝た方が体が楽になるだろ」
法生は心配したように声をかけるが結衣は首を横に振った。
あの夢を見たあとではとてもではないが眠れそうにない。
「リンさん起きてるんだよね……」
「はい。もう起きていようと思います。カメラの様子や他のことをする必要もありますので」
「じゃあ、あたしもベースにいる……起きてる」
綾子が途中できて麻衣が眠ったことを知らされて、結衣はホッとしていたが同じように眠るのは無理だと思った。
それだけ結衣は怖かったのだ、眠るとまた同じ夢を見そうだと思って。
「……おれも、起きてるわ」
「え?」
「結衣が起きてるなら、おれも起きてるよ。誰かそばにいた方がいいだろう?それに話し相手もいたほうがいい」
「ぼーさん……疲れてるでしょ?寝てもいいんだよ」
「気にしなくていいんだよ。こーいうときは、歳上に甘えるもんだ。いいな、結衣」
ぐしゃりと法生は結衣の頭を撫でた。
小さな頭を撫でながら法生は未だに結衣が怖がっていることに気がついていた。
(当たり前だ。自分が殺される夢なんて見たら、こうなっちまうのは当たり前だ)
小さな身体が震えていて、必死に泣くのを我慢しているのを思い出す。
妹の前だからと必死に我慢強く耐えている姿を見て、胸がいたんだ。
この少女はどうしてこうも我慢をするのだろうと。
甘えればいいのに、泣いてもいいのに、それを我慢してしまう。
(誰か、甘やかさなきゃならねぇ。麻衣もそうだが、結衣はとくに……)
孤児ということもあるのかもしれない。
涙脆い癖に泣こうとするのを我慢するクセはそこから来ているのかもしれない。
「お兄さんに甘えなさい」
「ぼーさん……」
「甘えるのが子供の仕事だしな」
言い聞かせるように呟くと、結衣の瞳から涙が零れる。
それを親指の腹で優しく拭ってやれば、擽ったそうに目を瞑る。
そして頬を優しく撫でてやると、彼女はまた擽ったそうにしながらも甘えるように手にすり寄る。
そんな彼女に法生は少し目を見開かせたが、直ぐになんでもないように微笑む。
「じゃあ、甘えていい……?」
「……おう。どーんと、来なさい」