第7章 血ぬられた迷宮
「……うん、大丈夫。ありがと……」
麻衣が落ち着いている様子を見ながら結衣は未だに自分が震えていることに気付く。
もう、夢なんだとわかったのだから落ち着けばいいと言い聞かせるが震えは止まらない。
(このままじゃ、変に心配かけちゃう……)
そう思っていると、結衣の手が法生に取られる。
驚いて法生を見ると、彼は無表情のまま彼女の手を握っていた。
「結衣、ちょっとおいで」
「へ?」
「ベースに行こう」
「え、え……なんで……」
「綾子、真砂子。麻衣のこと頼んだ」
法生は困惑している結衣を連れてベースへと向かう。
その後ろから安原やナル達も着いてきていて、結衣は『どうしたんだろう』と不思議に思った。
ベースに着くと、法生は結衣を椅子に座らせる。
そして彼女の足元に膝をつくと、彼女の頭を撫でた。
「も、いいぜ」
「え……」
「泣いてもいい。ずっと我慢してんだろう?麻衣の前だからって」
その言葉に結衣の瞳にじわりと涙が浮かぶ。
「怖かったな。麻衣と同じ夢を見たんだ、怖くて当たり前だ。泣き出しそうになるのも当たり前だ。もう我慢しなくていい。おれの前では泣いていいよ」
「……怖かった。刃物が首にくいこんで……」
「うん」
ポロッと涙が落ちる。
それを合図に涙腺が崩壊した。
「怖かったよ……!!」
「ああ」
大きな声をあげて泣き出す結衣を法生は抱き締めた。
震えている小さな身体、そして耳元で聴こえる悲痛に近い泣き声。
「怖かったな……もう大丈夫だ。大丈夫だ、結衣」
「うわああああんッ!!」
ナルや安原達はただそれを静かに見ていた。
自分たちが下手に声をかけるよりも、法生に任せた方がいいと分かっていたからだ。
結衣の泣き声は麻衣達にも聞こえていた。
綾子と真砂子は眉を下げ、麻衣はずっと姉が我慢していたのだと気づいて泣き出しそうになった。
「もう、平気だからな」
法生は結衣が泣き止むまで、声をかけ続けて抱きしめ続けていた。
「怖いのはもうないんだ。大丈夫だ、結衣。大丈夫だからな」
その夜、結衣は眠れなかった。
泣き続けたせいで目は腫れていてせいもある。