第7章 血ぬられた迷宮
「あるの。娘夫婦が住んでいた家も鉦幸氏の貸家だったので、これも追い出し──犯人の親が鉦幸氏の土地の小作人で、この親たちも追い出されたの」
「ひでぇ……徹底してるな」
「凄いね……」
結衣は思わず驚愕してしまった。
まだ誤魔化した工作員だけがクビになるのは分かるが、その家族までも追い出したりクビにするとは中々出来るものではない。
「でしょ?語り草になってるみたいよ。それに鉦幸氏はほんとうに人付き合いが悪かったらしいのね。この山荘にまったく人を近寄らせなかったらしいの。お手伝いさんなんかは居たらしいんだけど、諏訪じゃなくて別の地方から雇ってきたらしいって。……ただ、あまりにも人を寄せつけないことからこの家ではなんか怪しいことが行われているんじゃないかって言われてたそうよ」
確かにここまで人付き合いが悪いのならば、そんな噂があっても可笑しくは無い。
(あたしも、そう思ってしまうかも……)
結衣はほんの少しだけ気味が悪い感じがした。
「それと息子の宏幸氏だけど、ちょっと気になることを言ってたらしいの」
「気になること?」
「うん。家を改築し続ける理由を人に聞かれるとこう答えていたそうよ」
『──幽霊が出るんだ。幽霊を閉じ込めて出られないようにする為なんだ』
幽霊が出られないようにするため。
その言葉に結衣はさらに気味の悪さを感じてしまう。
「お嬢さん。鉦幸氏の交友関係はわかるか?浦戸という人物がいると思うんだ」
「浦戸?」
まどかに法生があの自画像を見せた。
「あら、それが鉦幸氏よ」
まどかはある程度の報告を終えると、昨夜のように窓から帰って行った。
残された資料や写真を見ながら、法生は息を吐き出す。
「──まさか鉦幸氏のペンネームが浦戸だったとはな。慈善家だったけど変人だったんだなー、このおっさんは」
「徹底してるよねぇ。一人がお金を誤魔化しただけに、その家族を徹底的に追い出したりクビにしてるなんて。変人すぎるよ」
法生の言葉に結衣は頷きながら呟く。
慈善家だという人間がするようなことでは無い……と考えていた。
「……変人で済まされるかな」
ナルの言葉に結衣が首を傾げた。