第7章 血ぬられた迷宮
それにしても、肖像画の人間は何処か薄気味悪い人相をしていると結衣は思った。
目は切長く鋭く、健康そうには見えない容姿である。
浦戸というのは誰だろうか。
誰もが思っていた時、ナルが目を見開かせて机の上を荒らし始めた。
「どっ、どしたの?」
「浦戸……『浦』だ」
「浦ぁ?」
「それがどうしたの?」
ナルはあの紙幣を明かりに透かして見ていたが、結衣に紙幣を渡してきた。
それを結衣は不思議そうに受け取りながらも、ナルがしていたのと同じように明かりに透かしてみる。
横からそれを麻衣が見ていた。
「あ……これか」
「浦ってこのことかー……あり?」
「どうしたー?」
「横っちょのシミの中に字が見える。えーと……?」
「なんて書いてあるんだろう……」
双子が眉間に皺を寄せていると、横から法生が覗き込む。
「……戸じゃねえのか?」
「へ?」
「戸?」
「浦・戸」
「あ、ホントだ」
「あっ、それで浦戸!」
シミをよく見ると、そこには『戸』の字がある。
それを双子が眺めていると、法生が近くにあった紙で文字を書き起こしていく。
「えーと、そーすっとここに『戸』が入って……。『よげく聞たさに浦戸る居死皆は来処』──」
「……なんて??」
「……一文字増えたところで、たいしてかわりねえか」
益々分かりやしない。
法生と双子が首を傾げていれば、安原がその紙を手に取って考え込んでいた。
「──ちょっと待ってください。「戸」は「浦」の左側ですよ」
「『戸浦』ぁ?」
「『浦戸』じゃなくて?」
「そうじゃなくて。これが書かれたのは明治時代ですよね。横書きの文は右から左に向かって読むんじゃないですか?」
「あ!」
「そっか!昔はそう読むんだっけ!」
安原は近くにあった紙を手に取り、書き直していく。
「そうすると、字と字の間隔から考えてみて……こんな感じになると思うんですけど」
『〇処〇来〇〇皆死〇〇居 浦戸に〇さ〇た〇〇聞く 〇げよ』
読めない文字がある為に、〇が多い。
なんと書かれているのかそれでもイマイチ分からない。
「最初の一文は読めそうなんだけどなあ」
「……読める、と思う」
ふと、法生がそう呟いた。