第7章 血ぬられた迷宮
そんな会話をしてる中で、ナルだけは相変わらずあの紙幣を眺めていた。
難しそうな表情で。
「ナル?その紙幣、そんなに気になるの?」
あまりにもナルがずっと見ているものだから、結衣は思わず声をかけた。
「結衣か……。この書かれた言葉が気になるだけだ」
「あ〜……確かに気になるよね」
ナルの傍から結衣も紙幣を覗き込む。
薄汚れているせいで読めない文字もあるせいで、なんて書いてあるのか分からない。
この紙幣に、なんの意味があって誰が何のために文字を書いたのか……。
「でっ!」
「「ぼーさん!?」」
暗闇の中、双子は懐中電灯を法生の痛そうな声を上げた方向へと向けた。
そこには大きな出っ張りがあり、ちょうど背の高い法生がぶつかりそうな高さにある。
相当痛かったのだろう。
法生はその場に蹲っていて、結衣は懐中電灯を当てながら思わず顔を覗き込む。
「あ、そこ、でっぱってるんで気をつけてください」
「……あと三秒はやく教えとけや」
「だいじょーぶ?ぼーさん。怪我してない?」
「ぶつけただけだから、怪我はしてねぇよ。ありがとうよー結衣ちゃんや。おじさんに優しくしてくれて、おじさん泣きそう」
「その言い方はちょっと気持ち悪い」
「酷いっ!!結衣ちゃんってば、酷い!」
はしゃいでいると、先に歩いていたジョンが声をかけてくる。
「所長さん。正面に階段がありますです」
律儀に安原を所長と呼んでいるジョン。
そんな彼の言葉に全員でそちらへと向かうと、階段があった。
「家の中央分に入るほど階段が増えますねぇ。とにかく、高さ測っちゃいましょう」
「何時もはそんなに意識しないけど、一段ずつ高さを測るってなると段数の少ないほうがいいね」
「なー」
「ホントだよねぇ……」
「しっかし、ナル坊もよく気がついたもんだ。まさか階段に化かされてるとはなあ」
それは遡る数分前のこと。
ベースでナルがとあることを言ったのが、今の始まりだった。
「──階段の段数が違う?」
「そうだ。例えばここ。行き止まりに辿り着くまでに上り下りの階段が八ヶ所あるが……よく見ると上り階段のほうが下りよりも段数が多い」
「……ほんとだ」
「多いね……」