第7章 血ぬられた迷宮
「──そうですね。わたしは貴方達が嫌いではありません。ただ生理的な反発というものは中々消えないものです。国同士の問題を個人の問題に持ち込むのは馬鹿げたことだと思います。それでも、どうにもならない問題があるということをあなた方は学ぶべきです」
「……うん」
「よく考えてみる」
「無礼な発言をしました。申し訳ありません」
「そんな!リンさんが謝ることじゃないよ!」
「そうだよ!こっちこそごめんなさい」
リンの言葉には既に棘がなかった。
初めて聞くような何処か温かさのある言葉だと結衣は感じていた。
すると、扉が音を立てて開く。
誰かが戻ってきたのだろうかと思っていると、ナルと法生たちが入ってきた。
「リン。測量しなおしたデータを出せるか?」
「はい」
ふと、法生は双子に何となく元気がなさそうな事に気付く。
結衣に関しては目元に薄らと涙が浮かんでいるのに気付き、双子の頭を撫でる。
「どうした、結衣、麻衣。元気ねえな。疲れたか?」
「ううん、平気」
「へーきだよ、ぼーさん」
「そうか?結衣は……なんか泣きそうになってるぞ」
「あ、欠伸したんだよ」
「……そっか」
何か隠している。
そう気づいた法生だが、それ以上は追求しなかった。
本人達が言いたくないことなら、無理に聞き出すものではない。
「まだ空白があるな。小さものはともかく、この大きいやつが気になる。正確な測量がまだだから、なんとも言えないが、どうやら二階にもこの部分がありそうだ。麻衣、三階はどうだ?」
ナルの言葉に麻衣は計測した時の見取り図を手に取る。
「三階にはないみたい。……っていうか、三階ってちょうどこの空白の上に被さってる感じだよ」
「でかい隠し部屋じゃねぇの?さっきの部屋みたいに上から入るようになっててさ」
コツン……と何かを叩くような音が聞こえる。
全員が窓の方を見ると、誰かが窓を叩いているのが見えた。
「〜〜っ、でっ……!」
「ゆ……っ!」
麻衣と結衣は思わず綾子に縋る。
もしかしたら、窓の外に幽霊がいるのではと恐怖を感じた時である。
「まどか!?」
ナルが叫びながら窓を開けると、そこには森まどかの姿があった。