第7章 血ぬられた迷宮
「だから、日本のしたことが許されるんですか?」
冷たい言葉だった。
そこには温もりの一つもなく、結衣は息苦しさを感じてしまう。
「そうじゃないよ、そんなこと言ってるんじゃなくて……」
「そんな事じゃないんだよ……」
心臓が激しく鳴り響いている。
頭に来ているような、そんな感覚に似ているが結衣の心を占めているものはそれではない。
ただ、悲しいのだ。
その気持ちは麻衣も同じ。
二人は声をふるわせながら呟いた。
「──……日本が、悪いことをしたのは事実だよ」
「……うん。それを覚えるっていうのはすごく必要だと思う。悪いことは悪いから」
二人は今にも泣き出しそうな表情だった。
結衣なんて、涙が瞳に溜まっていて今にもこぼれ落ちそうになっている。
「でも、そうやって昔の恨みをずっと引き摺ってるのはなんか違う気がする。そんなことしたら、世界中永遠に憎しみあってなきゃならなくなっちゃう。そんなの変だし、すごく嫌だよ」
「リンさんが、あたしや麻衣自身を嫌いって……嫌いなら仕方ないよ。でも、日本人だとか女とか孤児だとか、それはあたし達にもどうしようも無かったことだから」
「そんな事で嫌って欲しくないの」
「あたし、そんな理由でリンさんに嫌われたくない……嫌ってほしくないよ」
双子は今にも泣き出しそうな目でリンを見る。
そんな彼女達にリンは何故か、吹き出したのだ。
(わ、笑うような場面だった……!?)
珍しくリンが笑っているのと、笑うような場面だったのかと驚きで双子は唖然とした。
だがリンは可笑しそうに喉を鳴らして笑っている。
「……同じことを言うんですね」
「「はあ……?」」
「昔、同じことをわたしに言った人がいるんです。それを思い出しました」
双子は顔を見合わせる。
あのリンが笑っているし、言葉に棘も冷たさもない。
(あのリンさんが笑ってるよ……)
結衣の心を占めていた悲しみが、いつの間にか吹っ飛んでしまっていた。
「それって……ナル?」
「まさか。ナルに言ったら一言でしたよ。『結構、馬鹿だな』って」
双子は揃って『奴なら言う』と思っていた。
思えばナルが『嫌って欲しくない』なんて言うはずがない。