第7章 血ぬられた迷宮
「──とにかく、一階分の測量を日暮れまで終わらせよう。少しでも正確なデータが揃えば鈴木さんを捜しやすくなるだろう」
「「「えっ」」」
「ってことは、今日中にやれって?勘弁してくれよ〜」
「どれだけ部屋数あると思ってんの!?」
「所長〜。助手の鳴海さんは手伝わなくていいんですかー?」
ナルの言葉に、双子と法生は立て続けに文句を言う。
そして麻衣は影武者である所長の安原に助けを求めるが、彼は悩むようにしながらも助け舟は出してくれなかった。
「人には相応の分野っていうのが、ありますからねえ」
「は?」
「相応の分野……?」
安原が言いたいのは、ナルは頭脳労働者であり双子や法生は肉体労働者ということだろう。
それを理解出来なかった双子は安原の言葉に首を傾げるだけであった。
文句を言いつつも、仕事はしなければならない。
そう思って双子や法生たちが溜息を吐き出した時である。
「あの……すみません」
声がかかり、扉の方を見る。
そこには五十嵐と真砂子の姿があり、すぐに安原が歩み寄る。
「五十嵐先生。どうなさったんですか?」
「はい……あの……。先程、鈴木さんの自宅に電話してみたのですけれど……やはり帰っていないようなんですの。それで渋谷さんにご相談したくて……警察に失踪届を出した方がよろしいかしら」
「……え、そうですね……。でもまだ捜しはじめたばかりですし。もう少しよく捜してみて、それから警察に届けるかを考えましょう。ね?」
「ええ……はい……」
その日の日没。
双子に法生と真砂子と綾子は応接室で食事をしていた。
「……五十嵐先生、だいぶ疲れてたみたいだね。大丈夫かなあ……」
「鈴木さんを捜そうにも、この家わからない部分が多すぎるしなあ」
「……凄く心配してるよね、五十嵐先生」
見るからに五十嵐は疲弊していた。
一人で探そうにもこの家は広すぎて、また謎すぎる場所が多い。
そして一人だけになって心細いのもあるのはずだ。
結衣は何となく思っていた。
あの時南たちの『逃げた』という言葉に腹を立てたが、もしかしたらそうであった方がいいかもしれないと。
(そうだったら、無事って事になるから……)