第7章 血ぬられた迷宮
鈴木はこの家から出たとは思えない。
結衣はそう思っていたのと、この家では既に二名も行方不明になっているのだ。
何故『逃げ出した』なんて言えるのかと怒りが収まらない。
だが、五十嵐はまるで自分に言い聞かせるように呟いた。
「……そうかもしれません。……そうですわね、帰ったのかもしれません。あとで家に電話してみますわ。ええ……ちょっと叱ってやらなくちゃ──」
「五十嵐先生……」
その後、五十嵐は家へと電話してみると小さく笑い応接室を出て結衣達も仕事に取り掛かるためにベースへと向かった。
仕事はまた測量をし直すという作業。
その間、結衣は未だに南や井村の言葉に腹を立てていた。
「結衣、まだ怒ってんのか?」
「怒ってるみたい」
「──どこに消えたのかねえ」
「鈴木さん?」
「そ。結局昨夜のテープにはなにも映ってなかったし、おれたちが捜した範囲でも見つからなかったろ。まさかほんとに隠し部屋があってそこにいるとしたら、お手上げだよなあ。……まあ、それを調べるためにこーやって計測しなおしさせられてるんだけどな」
結衣達は暗い部屋の中で、計測が合わなかった部屋をまた計測し直していた。
懐中電灯を付けていないと見えづらい暗さである。
「……そもそも、自分の意思で消えたのかな。それとも意思に反して消えさせられたのか──」
「でも、まえにここで二人の人が消えてるんでしょ?やっぱ霊の仕業っぽくない?」
「普通はそう考えるのに、あの人たち逃げたなんて言い出してさあ……」
「まあだ怒ってるのー?結衣。確かにあれは腹立つけどさ、怒ってばかりだと疲れるよ?」
「わかってるよ」
頬を膨らませながら不貞腐れたように呟く結衣に、法生は苦笑を浮かべながら頭を撫でた。
「だが、その霊が『助けて』っつったんだよな。人が三人も消えたのが霊の仕業なら、助けを求めておいて人が来たら消しちまうのはおかしくないか?」
「え?」
「この家から人がいなくなりゃ、助けてくれるやつがいなくなっちまうんだぜ?」
「あー、そっか……」
「そうだよね。助けてくれる人、いなくなるよね」
法生の言葉に双子は納得した。
確かに助けを求めているのに、人を消したら助けて貰えない。