第7章 血ぬられた迷宮
安原は取り敢えず落ち着かせる為にと、五十嵐を椅子に座らせた。
だが彼女は取り乱した様子で話し出す。
「勝手に帰るはずないんですよ。荷物だって残ってるんです。コンタクトレンズのケースだって……」
「落ち着いてください、五十嵐先生。鈴木さんはいつから姿が見えないんですか?」
「……けさ、起きたらいなかったんです。明け方に一度目が覚めた時にはちゃんと寝ていたのに」
「明け方というのは何時頃ですか?」
「わかりません……」
「お目覚めになったのは?」
「……七時頃でございます」
五十嵐の言葉を聞き、法生は自身の腕時計を見る。
時計は十時をさしている。
「……いま十時か。少なくとも三時間姿が見えないってことだな」
鈴木は一体どこに行ったのか。
結衣たちの間に不安が過ぎった時に『お待たせいたしました』と大橋が姿を見せた。
「大橋さん」
「職員達に聞いてまいりましたが、誰も鈴木さんをお見かけしていないそうです。玄関には内側から戸締りをしておりますし、今朝見た時も鍵がかかったままでしたので」
「外に出た可能性はないわけですね。どこかで迷っているかもしれないし、まず邸内を捜してみましょう。鳴海くんいいですか?」
「……そうですね。ぼくとリンは昨夜録画した映像を調べてみます」
そうして、鈴木の捜索が始まった。
結衣は麻衣と安原と五十嵐と、法生はジョンと綾子は真砂子と共に探す。
一時間しないぐらいだろうか。
五十嵐は鈴木の姿ないせいか、重く溜息を吐き出した。
「とりあえず、一息いれましょう。集合時間ですし、こっちが参っちゃ元も子もないですから」
「ええ……すみません。ご迷惑をおかけして」
五十嵐はほんの少し疲弊していた。
その様子に結衣と麻衣は何とも言えず、安原と共に五十嵐を連れて応接室に戻った。
「おお。これは五十嵐先生。聞きましたよ、一大事ですなあ!」
応接室に戻ると南たちの姿があった。
「食事が済み次第、我々もお手伝いしようかと話していたところなんですよ」
「まあ、それは……」
南の様子は何処かはしゃいでいるように見えた。
その姿に双子は眉を寄せて、ほんの少しだけ怒りを覚える。