第7章 血ぬられた迷宮
数分経つ頃。
五十嵐はその間に何度も霊に呼びかけているが、なんの反応もない。
(本当にこれで霊が出てくるのかな……)
暗い部屋に五十嵐以外の声は聞こえない静かな空間。
結衣はほんの少し眠くなり、瞼が閉じかけそうになっていた時だった。
麻衣を挟んだ向こう側にいる真砂子が何かに反応した。
「真砂子?」
それには麻衣も気づき、彼女の名前を呼ぶ。
結衣も首を傾げて『どうしたの?』と聞こうとした時だった。
鈴木が握っているペンが勢いよく音を立てながら動いた。
何枚も何枚も紙に一心不乱に何かを書いていて、その光景に全員が動きを止めてしまう。
暫くして、天井や壁を叩くラップ音が響く。
その音はとても弱いものではなく、かなり力強く鳴っていた。
「すごいラップ音……」
「すごい音……」
あまりのラップ音に蝋燭が倒れた。
「うわあっ!」
「動かないでください!お静かに……」
あまりにも強いラップ音に結衣は思わず耳を塞ぎそうになったが、隣にいた麻衣が叫んだ。
「だれ!?」
「ど、どうしたの、麻衣……」
「誰か、背中を叩いたの……」
「え……」
麻衣の言葉に結衣は目を見開かせる。
そんな事あるわけないのだ……何せ自分たちの背後には壁しかないのだから。
「──ナウマク サンマンダ バザラダンカン!」
暗闇の中で法生の真言が響く。
一際強いラップ音が聞こえたのと同時に、部屋の明かりが着いた。
「うっ……」
あまりの眩しさに結衣は目眩を感じながらも、明かりのスイッチがある方を見るとナルがいた。
どうやら彼がスイッチをつけたらしい。
部屋の中は静まり返っていた。
鈴木や五十嵐に安原は唖然としており、デイヴィス博士は壁に張り付いていて南は頭を抱えてテーブルの下にいる。
「……霊を呼べたようですね」
ナルが散らかっている一枚の紙を手にする。
その紙には『助けて』と書いてある。
「これもおなじよ」
「こっちもです」
「これも……『助けて』って」
結衣や綾子とジョンは紙を拾う。
そこにはやはり『助けて』と書かれてある。
「……おい」
法生が固い声をだし、一枚の紙をナルに手渡す。