第7章 血ぬられた迷宮
「若い頃と言えば、昔『天明の大飢饉』てのがありましてね、あれは大変だったなあ……今の人は飢饉なんて知らないでしょう、なんて話をすると親に叱られるんですよ。生意気言うなって。うちの両親は建武の中興の生まれでして、二言目には『応仁の乱は大変だった』って言いまして」
スラスラと話し始める安原に井村は何も言えずに固まり、結衣達は可笑しくなってしまい笑いを何とか堪えていた。
「それも母方のじいさんに言わせると源平合戦に比べりゃ大したことは無いらしいです。父方のひいばあさんなんか壬申の乱はそりゃ大変だったっね。母方のひいひいばあさんは邪馬台国が滅亡後した時焼け出されたそうで、亡くなるまでその話ばかり……それでですね、父方のひいひいひいじいさんが……」
遊ばれているとわかったのか、悔しかったのか井村は安原に背を向けて足音を立てながら歩き出した。
「あれっ、井村さん。どこいくんですか?井村さーん?おーい?」
安原の言葉など無視して井村は姿を消した。
その様子に暫く固まっていた全員だが、双子が揃って吹き出してしまい、それに釣られて法生も笑い出す。
「安原さん、すごーい!」
「よくやった、少年!」
「……ちょっとやりすぎちゃいましたね。年長者をからかってすみません」
ある程度の測量を終えた結衣たちはベースに戻った。
ベースではリンが全員から聞いた測量などから美山邸の見取り図を作り出している。
よくもここまで見取り図が出来るものだ。
結衣は驚きと関心の気持ちで、パソコンに映る見取り図を眺めた。
「この二日で調べた邸内の見取り図だ。リン、部屋数は?」
「屋根裏部屋まで含めて百六室です」
「百六!?」
「そんなにあったの!?」
まさかの部屋数に双子は目を見開かせる。
普通の屋敷でもここまでの部屋数はないものだ。
「この線は?」
「建物の外周ですが」
「全然あってないじゃないか」
「そんな事言ったって、ちゃんと測ったもん!」
「そーだよ!何度も何度も測ったんだから!」
「そのうえ、部屋と部屋の間に隙間のある部分が多すぎる」
「だからあ!ちゃんと測るとそうなっちゃうんだってば。メジャーがおかしいんじゃないの?」