第4章 放課後の呪者
「……それで例の発言を?」
「ああ、『呪い殺してやる』でしょ?あんまりムカつくんでつい、いっちゃった」
「……いっただけ?」
笠井さんはナルの問に驚いた様子を見せた。
「やだ、ほんとに呪い殺せるわけないじゃん。ね」
「──……そう……」
その後、あしたちは生物準備室をあとにした。
最初はキツイ印象だった笠井さんも、話しているうちに年相応の女子生徒のような話し方になっていた。
ああなったのも仕方ない。
ただ、笠井さんはスプーンを曲げただけ。
曲げただけなのに、こうなるなんて……人とは怖いと思ってしまう。
「──なんか、たいへんそうだね。スプーン曲げただけでこんなさわぎになっちゃってさ」
「そうだね。ちょっと、可哀想だよね……笠井さん」
会議室の扉の前であたしたちは足を止める。
そしてナルが扉に手を触れた時、彼はあたしたちを呼んだ。
「──麻衣、結衣」
「ほい」
「なにー?」
「たのみがあるんだが」
まさかの言葉に、あたしと麻衣は目を見開かせた。
あのナルがあたし達に頼み事なんて、天変地異が起きるのではと思ってしまった。
「さっきの……スプーン曲げだが、みんなには秘密にしてくれ」
「え、あれを?」
「な、なんで?すごいのに」
「たのむ。とくに、リンには」
「別にいいけど……」
「いいよ、いわない」
なんで、とか、どうしてと聞きたいところだが、恐らくナルは応えてくれないだろう。
そう思って返事をすれば、彼は小さく『すまない』と呟いたがその表情にも驚いてしまう。
とても子供らしい、年相応の顔をしていた。
バツの悪そうな、悪戯がバレるのではと困っているような、そんな表情だった。
(あれま……ナルでもあんな顔するんだ)
あたしは驚いただけだが、麻衣はそうじゃないらしい。
ナルから背を向けて顔を真っ赤にさせているのだ。
「入らないのか?閉めるぞ」
我が妹ながら……なんて思いながら部屋に入れば、そこには既にぼーさんとジョンの姿があった。
まだ綾子と真砂子は帰ってきてないらしく、まだ見て回っているのかなと思いながら、未だに顔を赤くさせている麻衣を見た。
「いつまで、そんな顔してるのさ」
「いや……だってさあ。なんか、初めてまだナルが十七歳なんだなって気がして……」
「確かに」