第4章 放課後の呪者
笠井さんは何処か緊張した面持ちで、スプーンの繋ぎ部分を指で摘み、指に力を込めていく。
そして徐々に彼女は前屈みになった時、ナルが制止した。
「そんなことをしてはだめだ」
ナルは彼女の手を取り、辞めさせた。
「そんなことをしていると、ほんとうにゲラリーニたちの二の舞になる」
「二の舞……?」
なん事か分からないあたしと麻衣はキョトンとする。
笠井さんの先程の行動がなにがいけなくて、何故二の舞になるというのだろうかと首を傾げた。
そんなあたし達にナルは説明をしてくれた。
「いまのはトリックだ。スプーンが体のかげに入ったところで、先をイスのフチにあてて曲げようとした。ゲラリーニたちはほとんどが極めて短い期間で超能力を失った。それをカバーしようとして、トリックにたよったがそのうちのいくつかが暴かれて、彼らはペテン師の烙印を押されたんだ。いま、彼女がやろうとしたのは彼らが使った典型的なトリックの一つだ」
ナルの説明に、笠井さんは何処か焦った表情で叫ぶ。
「で、でも曲げたことあるのはほんとだから!」
「そういうトリックを一度でも見つかってしまうと、何を言っても信用されない。ゲラリーニの能力が不安定なのは研究者ならだれでも知っている。できないことはできないと言っていいんだ。それでも信用出来ない人間は頭から信じる気がないんだから、無視していい」
ナルにしては珍しく人を気にかけた言葉である。
普段ならおキツイお言葉を投げたりするが、笠井さんにはそうじゃなかった。
そんな中、産砂先生が彼女の肩に手を置いた。
申し訳なさそうな表情を浮かべ、笠井さんは俯いてしまう。
「……わたしが教えたんです。ほかの教師たちににらまれて、どうしてもスプーンを曲げなきゃならない状況だったので……」
可哀想と思った。
笠井さんはただ、スプーンを曲げただけなのに過剰に反応されてここまで追い込められたなんてと。
「……最近うまく曲げられなくて……恵先生に相談したら教えてくれたの。全校朝礼で先生に逆らっちゃったからよけい風あたりがキツくなっちゃって。恵先生だって『生物部はなにをやってるんだ』とか言われて、ほかの部員はやめちゃうし、なんでこんなメにあわなきゃなんないのかな」
そう呟いた笠井さんは泣きそうだった。