第4章 放課後の呪者
「……伊藤清美さん、でしたね」
ナルの真向かいに腰掛ける子は名前を呼ばれると、緊張したような面持ちで反応する。
「事務所で伺ったのは、『友だちがキツネに憑かれた』というご依頼でしたが、きょうはその子は?」
「休んでます……ずっと」
「机に飛び乗ったり、砂を食べたりするという話だったけれど」
「……それだけじゃないんです。いつだったか、制服のままプールに飛び込んじゃったりして。凄く……寒い日だったのに……」
「他人に危害を加えたことは?」
「……それはありません」
詳しく聞きながらナルは調査書に書き込んでいく。
「ふつう人がそういう状態になったときは病気じゃないかと疑うと思うけれど、なぜキツネが憑いたと考えたんですか?」
「だって……自分で『わたしはお稲荷さんの使いの白ギツネじゃ』って。ヘンになったのもコックリさん見てからだし」
「紙と……なんていうんだっけ。グラス?盃?それを使う?」
「ううん。あたしたちのは紙に五十音を書いて鉛筆を使うやつです」
コックリさんも色んなやり方がある。
あたしが知っているのは小銭に指を置いて、五十音を書いた紙の上でやるもの。
「コックリさんが帰らなかったとか、コックリさんをバカにしたりとか全然なかったの。でも帰る時、その子が『とり憑かれた気がする』って。そんなはずないっていったのに『肩が重い』って──。次の日にはもうヘンだったんです」
その話を聞いたあたしと麻衣、そしてぼーさんは思わず顔を見合せた。
「……そのコックリさんをした場所は?」
「1ー3の教室です」
「……そう……」
彼女が帰ってから十分も経たない頃だろうか。
会議室には続々と人が立て続けにやってきた。
「ロッカーが倒れてたり備品が散乱してたり、あまりしょっちゅうおこるんでイタズラかと思って、犯人を捕まえてやろうって思って、部室にみんなで泊まり込んで見張ったりしたんですけど、ちょっと目を話したスキに箱にしてまってあった砲丸が一列に並んでたり……」
「体育館に開かずの倉庫があって、先月そこで肝試しをやったんです。そこで百物語をしてホントになにか出るのかなって。それ以来ヘンな影が見えるようになって……あの……壁に首吊りのロープみたいな形の……」