第10章 神と、仔等(DMC4原作沿い)
「グ、ァ……ッ!!」
ビアンカは、リゴレットを介して流れ込む痛みに耐えていた。
爪が抉られる。
牙が食い込む。
幻影剣の攻撃がリゴレットを傷つけるたびに、ビアンカの体もまた同じ痛みを共有する。
(……考えなきゃ……)
このままだと、リゴレットが死んだらアタシも道連れになる。そうなったら魔女のしきたりに従って魂ごと魔界に引きずり込まれてゲームオーバー。でも、リゴレットを滅さない限り話が進まない。
結果、自分の生命力すら魔力に変換し、一時的に自分が死んだように錯覚させることにした。生命力が0ならリゴレットが消えても消費される命がないので、少なくとも同時に道連れにされるのは回避できる。
(……馬鹿だね、アタシ)
こんなことをして、何が残る?
たとえ悪魔の呪縛から逃れたとしても、生命力を全消費したこの体はもう、燃え尽きるしかないのに。
「……ッ」
体が、鉛のように重い。
何もかもが霞んでいく。
残された時間を、無駄にはできない。
ビアンカは、何とか意識を繋ぎ止めた。
すると、視界に青い姿が映る。
「……バージル……」
気づけば、彼の腕に抱かれていた。
胸元から伝わる温もりは、確かに現実のものだった。
(ああ、やっと……帰ってきた)
彼が自分の元にいることが、ただただ安堵を誘う。
だが、安堵している暇はない。
時間がない。
震える指で、彼の襟元を掴んだ。
半死人とは思えないほどの力で。
「……お願い……ネロのことを……お願い……」
最後の願い。
たとえこの命が尽きても、あの子だけは。
彼を守れるのは、もうバージルしかいない。
だが彼はまるでなんてことないといった様子で言葉を紡いだ