第10章 神と、仔等(DMC4原作沿い)
(……こんなもの、まともに制御できるわけがない)
案の定、リゴレットは迷いなく、バージルへと襲い掛かる。
迎え撃つように、バージルは静かに構えた。
リゴレットの巨大な爪が振り下ろされるが、バージルは一瞬で間合いを詰め、幻影剣を展開する。
無数の剣が悪魔の体を斬り裂く。だが次の瞬間、背後から小さいうめき声。
バージルの目がわずかに動く。
ビアンカが彼がリゴレットに与えたダメージを、同時に受けている。
(……繋がっている、か)
悪魔と魔女の契約に本来そんな力はない、だが、これは通常の契約とは違う。
彼女の意志ではなく、何らかの干渉により無理矢理引きずり出されたリゴレットが、彼女の生命力を糧に暴走している。更にそれが契約を歪ませている可能性が高い。
バージルは冷静に考える。
リゴレットを斬り伏せれば、同時にビアンカも死ぬ。
だが、放っておけば、彼女は度重なる大量の悪魔の召喚により生命力を食いつぶされていずれ死ぬ。
どちらにしても、時間がない。
バージルは低く唸る。
ビアンカの方を振り向かず、ただ前だけを見据えながら新たに幻影剣を展開する。
「……いいだろう」
その目は、淡々とした殺意と冷徹な計算に満ちていた。
「俺が、強引に終わらせてやる」
バージルは、容赦なくリゴレットの心臓を狙い、剣を振るった。
リゴレットの咆哮が轟く。
バージルの幻影剣が次々とリゴレットを切り裂くたびに、ビアンカの身体は苦痛に震え、血が床に滴った。
「ううっ……ぁ……っ」
息が、掠れる。
呼吸をするだけで痛みが走る。
皮膚が焼けるように熱い。
まるで身体の内側から何かが喰い破ろうとしているような感覚。
魔力が、命を削りながら溢れていく。
(……ああ、やっぱり、こんなの……)
耐えられるはずがない。
彼女は、虚ろな瞳でバージルの背中を見つめた。
そして、ぽつりと零した。
「ごめん、ごめん……アタシがあの時ダンテの名前を呼ばなければ」
バージルの眉がわずかに動く。
ビアンカは、懺悔するように続けた。
「魔女になんて、生まれたくなかった」
「……」
「生まれただけで、悪魔と契約させられて……死んだら魔界行きなんて、嫌だ」
彼女の唇が、苦しげに震えた。