第10章 神と、仔等(DMC4原作沿い)
一方その頃――
バージルは、ビアンカが捕らえられている施設にたどり着いていた。
空気が異常だ。
悪魔の瘴気が充満し、嫌な気配が漂っている。
彼は迷いなく施設の奥へと進んだ。
そして――
そこで目にしたのは、血に塗れたビアンカの姿だった。
「……ッ!」
磔にされ、四肢には深い裂傷。
無数の下級悪魔が彼女に群がり、肉を齧り取ろうとしている。
バージルが幻影剣を操り、一気に踏み込んでビアンカの目の前で悪魔を殲滅する。
だが――
ビアンカの状態は、すでに限界に近かった。
「……バージル……」
ぼろぼろの唇が、かすかに震える。
もとより対して持っていない魔力を強制的に引きずり出され、完全に制御不能になっていた。
彼女の周囲には、不安定な魔力の波動が渦巻いている。
「……いったい何があった」
バージルの低い声が、空気を震わせた。
「……魔女の……力、が……」
ビアンカの目が虚ろに光る。
「悪魔を、喚ぶ、力が……!」
次の瞬間――
彼女の口から、呪文のような言葉が紡がれた。
「……JOCULATOR……INFERNI……」
大気が揺れる。
施設全体が、異様な魔力に包まれる。
「……チッ!」
バージルが即座に振り返る。
魔法陣が輝き、黒き獣の咆哮が響き渡る。
彼女の魔力を無理矢理引きずり出しながら「リゴレット」が、降臨した。
異形の姿が、ゆっくりと魔法陣から顕現する。
爛々と光る四つの瞳、捩じれた角、巨大な四肢。
それは、この場にそぐわぬほどの圧倒的な威圧感を持っていた。
「……なるほどな」
バージルは低く呟く。
こいつが、ビアンカの契約する悪魔か。血が薄いと自称するだけあり、大型下級悪魔に毛が生えた程度だろうか。
(だが……妙だな)
魔力の流れが異常すぎる。
召喚者であるビアンカの生命力が、ごっそりと削られていく。
彼女はすでに意識も朦朧としている。それだけでなく、彼女の周囲に次々と小規模の魔界につながる穴が開く。悪魔を呼ぶ力を持つ魔女の力だ。これも、恐らく彼女の意志と関係なく行使させられている。