第10章 神と、仔等(DMC4原作沿い)
ネロは、ダンテの痕跡を追いながら、次第に教団の異様な空気を感じ始めていた。
(……何かがおかしい)
教団は、何かを隠している。
ダンテが狙った「サンクトゥス」の正体。
母が捕らえられた理由。
すべてがきな臭い。
そんな中、ネロの前に立ちはだかったのは、クレドだった。
「……クレド」
静かにレッドクイーンを握りしめながら、ネロは問いかける。
「何が起こってる?」
「……」
クレドは沈黙したまま、ただ冷ややかな視線を向けてくる。
「教団は何を企んでるんだ? 何で母さんが捕まった? キリエは――」
「……貴様が知る必要は無い」
瞬間、クレドの剣が、一閃。
「ッ!!」
ネロは反射的に後ろへ跳ぶ。
「マジかよ……クレド!」
躊躇なく剣を振るうクレド。
その表情には、以前のような優しさは欠片もなかった。
「オレは教団騎士団長としての務めを果たす」
「……ちっ!」
ネロは不本意ながらも、応戦を余儀なくされる。
しかし、クレドの体が、突如として悪魔へと変貌した。
「クレド……まさか、アンタまで……!」
教団の目的は一体何なのか。
疑問を抱く暇もなく、クレドの猛攻が襲いかかる。
ネロは歯を食いしばりながら、必死に剣を振るった。
戦いたくなどないのに、その力量差は圧倒的であっという間に力をそがれたクレドはネロの右腕に吹き飛ばされてしまい、変身も解かれた。
――ただ、そのタイミングが最悪だった。
「ネロ……!?」
キリエの声が響いた。
ネロとクレドが咄嗟に戦闘を止め、振り返る。
そこにいたのは、アグナスに連れられたキリエだった。
彼女の目に映ったのは襲われる兄と、彼に向って悪魔の右腕を構えたネロの姿。
「……ぁ……」
キリエの顔が青ざめ、全身が震える。
「違う……キリエ、これは……!」
ネロが慌てて腕を隠し説明しようとするが、彼女は後じさり、悲鳴をあげた。
「ネロ、どうして……!?」
二人のその一瞬の反応が「ネロの弱みはキリエである」という情報を、教団に知らしめることになってしまった。
アグナスの唇が、不気味に歪む。
ネロの背筋が、ぞくりと冷える。
(……マズい)
ネロは、焦燥と怒りに燃えながら、アグナスを睨みつけるのだった。