第26章 事変
――夏油side――
「……ッ」
全身に走った鋭い痛みで私は目を覚ました。
気を失っていたのだと理解したと同時に、自分がなぜ生きているのか疑問を抱いた。
私は確か魔虚羅に胸と喉を貫かれた筈だ。
普通なら致命傷で死んでいるはずなのに。
「……宿儺?」
自分の身体から感じる呪力。
これは宿儺のものだ。
まさか、反転術式で私を助けたのか。
でも一体なぜ。
いや、今はそんなことどうでもいい。
伏黒は、伏黒は大丈夫なのか。
ぐるりと辺りを見渡そうとした私の目の端に、捜していた人物が建物の壁に寄りかかるように目を瞑っていた。
魔虚羅に攻撃された時にできた怪我はどこにもなく、コイツの怪我も宿儺が治したのだと分かった。
伏黒の心臓に耳を押し当てれば微弱ではあるが動いていることが確認でき、安堵のため息が漏れた。
緊張の糸が緩んだからなのか、それともその気配に今の今まで気付かなかった私が鈍感なのか。
降り注ぐ強大な呪力に全身がびりびりと震えた。
呪力の暴力、と言えばいいのだろうか。
攻撃をされているわけでもないのに、魔虚羅と宿儺のぶつかり合う呪力にあてられ、身体が思うように動かない。
「……う"ッ」
吐きそうになる衝動に駆られたがなんとかそれを飲み込んだ。
伏黒の側から離れる訳にはいかない。
が、宿儺を野放しにしておくわけにもいかない。
「……おい、細身野郎」
「な、なに……」
近くにいた細身野郎に声を掛ければ男は震えた声で返答した。
顔面蒼白のそいつは魔虚羅と宿儺の戦闘に腰を抜かしているようだった。