第4章 七海健人 覚悟
七海side
その小さな身体で
精一杯に私を受け止めて
嘘偽りのない澄んだ瞳で愛を囁いた
その瞳は私だけを映して
真っ直ぐに伝えられる愛は恐ろしいほど温かい
荒んだ心が一瞬にして洗われたような
怖いくらいの幸福に目尻が熱くなるのを感じる
頭を撫でる優しい手つき
まるで人生最後の日にみる
幸せな走馬灯のようだ
どうしても今は手放したくなくて
子供が駄々を捏ねるようにその身体を抱き締めて身勝手な我儘を口にする
『で‥もっ‥‥午後からは‥授業もあるし‥‥』
「お願いします」
『っ!!で‥でも‥っ‥』
「お願いします」
『ぅぅっ‥』
淡い瞳の奥が困ったように揺れる
そんな様子が可愛くて頬にキスをするとパッとさらに赤くなる顔
先程まであれほど淫らな行為をしていたというのに
この初心な反応
そんな表情をさせているのも自分なのだと思うと
少し意地が悪いと思われるかもしれないが
それすらもどうしようもなく幸せな気分になった
「すみません‥冗談ですよ‥今日のところは諦めます」
戸惑うさんの横に寝転んでその身体を腕の中に抱き締める
密着して触れた胸から感じるとくとくと早い鼓動
全てが可愛くて我慢するのも一苦労だ
『ごめんね‥‥』
小さく呟く声
柔らかな髪に指先を絡めながら優しく頭を撫でる
「構いません‥午前は私にくれましたから」
『健人も忙しいのに‥ありがとう‥』
「忙しいのはお互い様です」
ギュッと腰に回される手
幸せな時間が過ぎていく
静かな部屋の中
コツコツと時計の秒針が邪魔をするかの如く音を鳴らす
「そろそろ‥時間ですね」
学生時代に引き戻されるかのような懐かしいチャイムの音
午前の終わりの合図に腕の中の身体がぴくりと動く
『離れたく‥ないな‥』
ギュッと胸元に顔を押し付けているからどんな顔をしているかは分からないが
真っ赤に染まった耳をみてつい笑みが溢れてしまう
「先程も言ったはずですが‥あまり可愛い事を言っていると本当に離しませんよ?」
顎を掴んでこちらを向かせてキスをする