第4章 七海健人 覚悟
「あなたらしいですね」
優しい口付けの後に
長い指先が目元からこぼれ落ちる涙を掬い取る
『ぜったいに‥守るからっ‥先に死んだら私が‥許さない‥っ』
ずっと思っていた事
七海くんは
どこか生に執着の薄い気がしていた
灰原くんを失ったあの日
わんわんと泣き崩れる私の横でぐっと涙を堪えていた
いつかその日がきても灰原くんの元へ笑顔で行ってしまうんじゃないかと怖くなる時があった
それがなぜか今溢れ出して
涙が止まらなくなってしまうとさらにキツく腕の中に閉じ込められる
厚い胸板からとくとくと心臓の音が伝わってくる
温かな肌
「あなたこそ‥私より先に死んだら一生何があっても許しませんからね」
強く抱きしめられている腕が少し震えている気がして見上げると頬に涙の筋が残っているのがみえた
『死なない‥ようにがんばる‥』
「命をかけても守ります」
『それじゃあ七海くんが危ないからだめ!』
「まぁあなたは天然の人たらしですから沢山の人が守ってくれるでしょうが‥出来る事なら、彼氏として格好つけさせてもらいたいところですね」
『か‥彼氏‥』
「今更何を照れているんですか?」
『そ‥それはっ‥』
「あと、七海くん呼びももう卒業してください。恋人になるからには‥健人でお願いします」
『わ‥わかった‥』
「ほら、言ってみてください?」
口角が少しだけ上がる
いつもの大人っぽい七海くんがたまに見せる
学生時代みたいな無邪気な笑顔に心臓がまたとくりと跳ねる
『け‥‥けん‥と‥』
「もう一回」
『‥健人‥』
「なんですか?」
嬉しそうに綻んだ笑顔
大好きな人の笑顔ってこんなにも胸がキュンとするんだって
ドキドキした心臓が飛び出しちゃいそう
『好き‥』
「‥‥もっと名前で呼んで欲しいので、今日の授業は午後からにしてください」
『ひゃっ?!』
抱きしめられていた身体をごろんと後ろへ押し倒されると
大人な顔をした七海くんが上に覆い被さる
「さんの恋人になれたと言うことを、じっくりと堪能させてください」
『んっ‥ぅ‥』