第1章 【僕にできること】
紫耀の運転する車で彼の自宅へと向かう途中、
喉の奥が焦げ付くように乾き、
胸の奥から押し寄せる熱に息が苦しくなった。
「っ……はぁっ、……っ」
抑えきれない吐息が漏れると、ハンドルを握る
紫耀の鋭い視線がミラー越しに突き刺さる。
「廉……息、苦しい?
シートベルト外して横になんな?」
「そやね……そう、させてもらうわ……っ」
駐車場に到着した頃には、俺の身体は
熱で芯から痺れ、意識がうつらうつらと霞んでいた。
紫耀は後部座席のドアを静かに開け、
充満した甘いフェロモンを逃がすように
冷たい外気を入れ込みながら、
心配そうに俺の覗き込んでくる。
「……廉? 部屋まで歩ける?」
「……ん、歩く……っ」
これ以上迷惑をかけたくない意地で、
なんとか自力で立ち上がろうとしたものの、
膝の力が抜けて視界が大きく揺れた。
「あっ……」ふらついた俺の身体を、
大きな手と逞しい腕でしっかりと受け止め、
抱き寄せるように支えてくれる紫耀。。
紫耀の腕に包み込まれた瞬間に広がる
αの雄々しい体温と匂い―――。
それだけでナカが熱く脈打ち、
奥がくちゅりと蜜を溢れさせた。
「強がんなよ、廉。ほら、掴まって?」
優しく耳元でそう囁かれて、
首筋に触れる紫耀の吐息に肌がゾクゾクと泡立つ。
ただの仲間としての優しさやって分かってんのに
心臓が早鐘を打ち、
その腕に抱きしめられるたび、
俺の躰も心も、あっさりと紫耀の熱に溺れていく。
「なんか、俺……迷惑かけてばっかやな……」
「……別に、迷惑とか思ってないって!
仲間なんだから当然っていうかお互い様じゃん?
あぁ、もしかして、あれ?
弱ってる顔見られたくないとかあんの?今更 笑」
裏表のない笑顔でケラケラと笑う紫耀。
裏のない「仲間」という言葉が
優しければ優しいほど俺の胸に突き刺さる。
素直に甘えることに戸惑っとった俺を見かねた紫耀が
「しょうがないなぁ」とでも言いたげなため息を
漏らし、俺に背中を向けて屈み込む。
「じゃあ、これならい?ほら、背中乗って」
紫耀の優しさと申し訳なさと情けなさで、
胸の奥がぎゅっと締め付けられる。
「廉? 変な意地はんなって。笑
余計なこと考えずに、大人しくおぶられとけ」