第1章 【僕にできること】
誰よりも早く俺のフェロモンのわずかな変化を
感じ取ってくれて、
呆れながらも
決して俺を見捨てることなく、
最後まで俺を守り続けてくれとった紫耀。
*
その日、自宅のドアを開けた瞬間―――
喉の奥が灼けるような濃厚なフェロモンの匂いが、
むせ返るほど漂っていた。玄関に並んだ廉の靴を
目にした俺は、逸る胸を抑えながらリビングへと急ぐ。
『しょぉっ! 遅いやん……っ!!』
『廉、悪い! 遅くなった……』
『もう、なんでもえぇから……はよ、シよ……?』
『俺、まだ風呂入ってないよ?』
ソファに腰掛け、熱の籠もった瞳で俺を見上げる
廉に誘われた俺は、背もたれ越しにそっと、
廉の華奢な体を抱き寄せ、
熱を帯びた首筋へ静かに口づけを落とした。
『ええよ、全然』
『冗談 笑。今日めっちゃ汗かいたし』
『ヒートのとき、そういうのにまで興奮するって
知っとるくせに……ほんま、よぉ言うわ、紫耀は』
くすりと苦笑いを浮かべながら、
首だけをひねって俺を振り返る廉
悔しいくらいに、美人だ。
俺の腕の中で、あいつは透けるような白シャツを
1枚、羽織っているだけ―――
はだけた胸元から覗く鎖骨と、滑らかな肌。
胸元が見えそうで見えない、絶妙な位置のボタンを
ひとつだけ留めて、俺の視線を誘うように、
わざとゆっくりと身じろぎする廉。
まるで俺がどこを見ているのか確かめるような
瞳を向けて、その姿で俺を狂わせようとしているのが、
痛いほど伝わってきた。
『なぁ、しょぉ……もぉ、えぇやろ?
無駄なお喋り、要らん。
……俺、もう、、我慢できん……っ』
熱を帯びた細い指先が俺の唇をなぞり、
欲望に濡れた瞳でひたすら俺をねだってくる廉。
甘く痺れるようなフェロモンが鼻腔を突き、
理性をじわじわと焼き溶かしていく―――
多分、廉がΩ(オメガ)だと知るよりずっと前から、
俺は廉に惑わされ続けている。
多分、初めてお前に逢ったあの日から───ずっと。
ソファの座面側に回り込み、
廉の上にゆっくりと跨がった瞬間、
「もう待てない」と言わんばかりに
腰をグラインドさせ
欲望に硬く強張ったソレを強引に擦り付けてきた。