第1章 【僕にできること】
紫耀と番になったのは、俺のヒートが酷くなって、
活動に支障をきたすようになった頃。
けど、俺と紫耀はそれ以前から長いこと、
人知れずそういう特別な関係やった―――
***
『れん! れんっ!!』
『な、なに……?』
『お前さぁ……今日はもう上がった方がよくね?』
『……えっ、大丈夫よ? 俺』
確かにその日は身体が重く、妙に火照るような怠さが
あったけれど。まともなヒートを経験したことが
なかった俺は、まぁこんな日もあるよなぁ、
くらいに甘く考えとって。
『大丈夫じゃねぇから言ってんだろ!!
あーーもう!! ちょっと、お前こっち来いって!』
ダンスレッスン中、
荒い息を吐く俺の腕を強い力で掴み上げる紫耀。
周囲を気にしながら強引に腕を引っ張っていく
その勢いに、俺は訳もわからないまま、
必死について行くしかできなくて。
──それが、すべての始まりやった。
普通、月に1回ほど訪れるらしいヒートが不順やった
俺は、その後も自分ではいつ発情期が来るのか
読めずにいた。
そう。ヒートってな、個人差が大きいねん。
俺は身体の構造上、生理もくるから
よくわかるんやけど、まさにそれと同じで。
ちゃんと決まった周期で規則的に来る人もいれば、
俺みたいに半年くらい平気で空いたりする
不順なタイプもおって、症状のしんどさも
人によってそれぞれらしい。
俺の場合、ありがたいことに生理痛もヒートの倦怠感も
軽い方ではあるんやけど……紫耀曰く、
その時に撒き散らすフェロモンが「えぐい」らしい。
『もっと自覚持てよ』
『警戒心なさすぎ!』
『誰にでも距離近すぎ!』
紫耀からは顔を合わせるたびに
そうやって小言を言われ、怒られてばかりいた。
挙げ句には、呆れ果てたような顔で、
『……もうさ、そこまで言ってもわかんないなら、
いっそ、1回痛い目にでもあえば?』
なんて、冷たいトーンで吐き捨てられる始末。
けど―――、
「廉、もしかしてそろそろ?」って、心配そうな
紫耀の声に静かに頷くと「わかった。今日から
1週間は俺んちな。飲み会も禁止。……わかった?」
そう言って、
ヒートが近づく俺を何よりも優先してくれて。
「痛い目にあえば」なんて意地悪を言うくせに、