第1章 【僕にできること】
「そういえば今まで確認したことなかったけどさ。
オレはβなんだけど……廉も、β?」
ふたりで活動していくことが決まって、
最初に海人から聞かれたのがこれやった。
「……当たり前やん笑」
もう呼吸をするようにこの嘘をつき続けている俺。
「あ、よかったぁ……! 2人しかいないからさ、
β同士じゃないと大変そうじゃん? イロイロ笑」
「そらそうやな」
口元にふっと作り笑いを浮かべながら、
何でもない風を装って軽く相槌を打つ。
胸の奥がちくちくと痛むけれど、3人と道を
分かつことになって、ただでさえ不安定やのに
これ以上海人を不安にさせるわけにはいかんから。
バレんように気つけるし、
海人には絶対に迷惑かけへんから……。
このウソだけは許してな。
「β同士か……平和にいけそうだね!」
「まぁ……俺らは平和の象徴、みたいなところあるしな笑」
「あっ……オレたち、鳩……だったんだ?笑」
「そゆことそゆこと! そういうことになってくる笑」
「あ……でも、オレたちの1年目の活動のテーマ、
ピースとか……いいかも? え、ありかも……!
ピースにいろんな意味持たせるとかさ……」
海人はアイディアが浮かんだとき、
独り言なのか俺に話しかけてんか判別がつかん
絶妙な声のボリュームで自分の思考を整理していく。
眼球をくるくると動かしながら発想を広げていく
その姿は、どこか愛おしい。
そんな頼もしくも愛くるしい相棒を
横目で見つめながら、俺の目下の目標は──
“このウソを、絶対に貫き通す……”
ふたりで守っていく未来のために。
俺がΩであることは絶対に誰にも悟らせない、と
胸の奥で静かに、けれど揺るぎない誓いを立てた。
***
ここのところ、廉の調子がよくない気がする。
ていうか、絶対にそうなの!!
異常に汗をかいていたりして、すごく、
すっごく心配してる……。
だけど、弱みを見せたり心配されたりするのを
嫌がる廉だから──。
「……れん、大丈夫?」
声になりかけたそのたった一言を、
今日も胸の奥へと飲み込んだ。
*
……まずい気がする。
紫耀から番関係を解消されてから
初めてのヒートが近づいとる気がする……。