第1章 【僕にできること】
「廉……大丈夫?」
白を基調とした無機質な病室。掠れた声で呼びかけられ、廉はゆっくりと目を開けた。視界がぼやけるなか、最初に飛び込んできたのは、見たこともないほど蒼白な顔をした海人の姿だった。
「かい……と?」
「よかった……気がついた。熱、まだすごく高いけど、意識戻って本当によかった……」
安堵からか、海人の目からぼろぼろと大粒の涙がこぼれ落ちる。廉はベッドの上でゆっくりと自分の手を握りしめてみた。全身を叩き起こされたような激痛と怠さは残っているものの、あの狂おしいほどのヒートの波からは脱したらしい。
紫耀に番を解消されてから初めて訪れたヒートは、想像を絶するものだった。フェロモンこそ外に出なくなっていたものの、体内で渦巻く熱量は逃げ場を失い、一人で耐え切れるレベルを超えていたのだ。楽屋で激痛に耐えかね、そのまま意識を失った記憶が最後だった。
「ごめんな、海人……びっくりさせたよな。俺、ただの貧血か何かで……」
(海人……ごめん……)
心配かけたくなくて、弱みなんて見せたくなくてずっと隠してたのに。
βの海人に、こんな重い症状を見せてしまうなんて。