第1章 【僕にできること】
「かい、と……っ、熱、……苦し……いっ」
「救急車呼ぶから! すぐ呼ぶから!!」
震える手でスマホを取り出し、必死な声で
オペレーターに状況を伝えようとする海人の声が
どこか遠くの出来事のように聞こえる。
体内を巡る熱の暴走はとどまることを知らず、
俺の意識は急速に白いモヤの中へと呑み込まれていった。
*
―――怖かった。
このまま、廉が死んじゃうんじゃないかって。
鳴り響くサイレンの音が、
絶え間なくオレの鼓膜を刺す。
救急車の中、酸素マスクをつけられた廉の手を、
ずっと、握りしめていた。
廉の手が熱いのか、
恐怖に震えるオレの手が冷たいのか。
多分、そのどっちもで。
廉の手を握る俺の手がもの凄く震えていた。
「バイタル低下してます! 体温40度オーバー、
急性ショック症状の可能性高いです!」
「受け入れ先の病院、至急確認してください!」
隊員たちの緊迫したやり取りが飛び交う中、
何もできないオレは青ざめた顔で
廉を見つめることしかできなかった。
「廉、れぇん……お願い。
お願いだから……目ぇ開けてよ……っ!」
気が気じゃないままに俺たちの乗った救急車は
夜の街を猛スピードで駆け抜けていった。