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【KP×オメガバース】

第1章 【僕にできること】






気がついたのは朝やった。


薄いカーテンの隙間から差し込む光が、
ぼんやりと部屋を照らしている。


「……ん……」

重たい瞼をゆっくりと開ける。
最初に感じたのは、身体に残る気怠さ。


頭がうまく働かない。
昨夜のことも、夢やったような気すらした。


けれど――…


「……しょお……?」

無意識に隣へ手を伸ばすと
ひやりとしたシーツだけが、指先に触れた。


「……っ」

一瞬で、目が覚めた。


そうや。昨日――…
紫耀が、俺の番を解いた。


あれは夢なんかやない。
胸の奥が、ずきんと痛んだ。


ゆっくり身体を起こしたとき、ふと、
自分がバスローブを着せられていることに気づいた。


……これ。紫耀がうちに泊まるとき着るやつやん。
昨日は、こんなん着てなかった……。


ぼんやりと記憶を辿る。


意識を失う直前まで、
紫耀の腕の中にいた。


そのあと――
きっと、紫耀が着せてくれたんやろう。


随分と汗もかいとったはずやけど、
気持ち悪くもないから多分、、


ホットタオルで俺の身体を丁寧に拭き
乱れた髪を整えるように、触れる
紫耀の手が瞼の裏に浮かんだ。


最後まで。
最後の最後まで、
紫耀は俺に優しかった。


「……なんで……」

声が震えた。


もう番やないのに。
それでも、こんなことまでしてくれた。


バスローブの襟元を、
無意識にぎゅっと握りしめる。


―――その瞬間。
ふわり、と。

紫耀の残り香がした。


「……っ」

一瞬、息が止まる。


―――まだここにおる。


そう錯覚してしまうほど、
懐かしくて、愛おしい匂い。

廉は震える手で、
バスローブを胸元まで引き寄せた。


そして、ぎゅう、と。

自分の身体ごと包み込むように、
強く抱きしめる。


「……しょお……」


そこに残る香りを少しでも失いたくなくて、
何度も何度も胸元へ顔を埋める。


「……まだ、一緒におるみたいやんなぁ……」

そう呟いた瞬間、
涙が一粒、頬を伝った。


昨日までは、
手を伸ばせば触れられた。


苦しくなれば、
抱きしめてもらえた。


名前を呼んだら
こたえてくれた。


それが全部、
たった一晩でなくなった。

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