第1章 【僕にできること】
「……しょぉ、あああぁぁぁっ……!!」
絆が途切れる喪失感が、俺の全身を駆け巡る。
番を解消されたΩは、
そのショックから錯乱状態に陥ることによる
二次被害を防ぐため、防衛本能として
意識を強制的にシャットダウンさせるのは知っとった。
「っ……あ……っ」
涙に濡れた目を開けたまま、
俺はゆっくりと力を失っていく。
そしてそのまま、
深い眠りに落ちるように意識を手放した。
―――静まり返った室内。
俺は荒い息を整えながら、ピクリとも
動かなくなった廉の身体を優しく抱き上げ、
乱れた髪を、そっと撫でつけた。
「……廉。最後まで言えなくて……ごめん。」
その震える俺の声は
もう、聞こえてはいない。
愛しているからこそ、
伝えられなかった。
それが、俺にできる最後の愛情だと思えたから。
レアケース過ぎてあまり知られてはいないが、
番を解消することは、
ただ絆を断ち切るだけの残酷な行為ではない。
解消するαに偽りのない愛情が存在するときに限り、
番を解かれたΩの身体は、異常なフェロモンに
干渉されないβと共に生きる可能性を残すことができる。
そのことを、俺は知っていたけれど、
知っていたからこそ、廉には言えなかった。
もしも廉がそのことを知ってしまったら……
誰かに惹かれても。
誰かに想われても。
誰かと愛し合うことを躊躇ってしまう気がしたから。
俺の存在が廉の未来を奪い続けることだけは、
どうしても避けたかった。
だから―――
俺は最後まで、言わなかった。