合同リレー作品集【鬼滅・呪術・ヒロアカ・WB 他】
第5章 お題小説 花モチーフの歌 + α
馬鹿馬鹿しい。
そんなことで願いが叶ったらどんなにいいか。
心の中で吐き捨てた、その時だった――
「あ。伏黒くんにも」
彼女が一歩距離を詰めて、俺の肩口に手を伸ばしてきた。
「おい、なんだよっ」
「ふふっ、お揃いだね」
そう言って、目の前に差し出されたのは――白い綿毛。
俺を見上げる顔が、さっきまでより近い。
(……っ、)
こんな距離で、そんな顔を見せられたら。
冷めた理屈なんて、一瞬で吹き飛ぶ。
気づけば、自分でも呆れるくらい素直に願ってしまっていた。
こいつが、先生じゃなくて……
俺のものになりますように。
風がふわりと綿毛をさらっていく。
空高く舞い上がり、夕焼けの赤に溶けて見えなくなった。
(何やってんだ、俺は。子供か)
急に自分の行動が恥ずかしくなる。
誤魔化すみたいに綿毛の飛んでいった先を目で追うと、彼女も綿毛が消えた空をいつまでも見上げていた。
まるで、その先にある遠い場所を追いかけているみたいに。
(……そっちばっか、見んなよ)
苛立ちとも焦りともつかない感情に突き動かされて、俺は彼女の制服の袖口を掴んでいた。
「え?」
彼女が目を丸くして、こっちを向く。
さっきまで空を追っていた目が、俺に戻ってきた。
「……よそ見すんな。帰るぞ」
「あ、うん……」
掴んだ袖口を、少しだけ強めに引っ張って歩き出す。
よろけるように足を踏み出した彼女が、俺のすぐ隣に並んだ。
綿毛に願うなんて、柄じゃない。
そんなものに任せて、ただ見ているだけでいられるほど――俺はできた人間じゃない。
相手が五条先生だからって、最初から諦められるほど物分かりもよくない。
袖口から手を離して、彼女の手首を掴む。
「……伏黒くん?」
戸惑う声が聞こえたけれど、俺は前を向いたまま気づかないふりをした。
こいつの心が、どれだけあの人を見上げていても。
綿毛みたいに、手の届かない場所へ飛んでいきそうになっても。
この手を引いて。
何度でも、俺の方を向かせるから――
──「ダンデライオンの願いごと」 Fin.