合同リレー作品集【鬼滅・呪術・ヒロアカ・WB 他】
第5章 お題小説 花モチーフの歌 + α
流せばいい。
いつもみたいに気にしなければいい。
そう思ったのに、喉元まで上がってきた言葉を飲み込めなかった。
「なんでそんなこと聞くんだ」
「え?」
「五条先生のこと。なんでわざわざ俺に聞くんだよ」
「それは……伏黒くん、先生と付き合い長いし……」
「だからって、何でも知ってるわけじゃない。俺はあの人じゃない」
つい強い口調で言ってしまった。
自分でも嫌になるくらい、余裕がない。
これじゃ、八つ当たりだろ。
彼女の目が戸惑うように揺れて、しゅんと俯いてしまった。
(……そんな顔、させたいわけじゃない)
先生なんかやめろよ。
俺にしろよ。
言えたらどれだけ楽だろうか。
でも、彼女が憧れ、その背中にいつか追いつきたいと願っているのは――あの人だけだ。
俺じゃ、彼女の特別にはなれない。
ふっと、風が強く吹いた。
川沿いの草むらから、白いものがいくつも舞い上がる。
そのうちの一つが、風に乗って彼女の黒い髪にふわりと落ちた。
俺が手を伸ばすと、びくっと彼女の肩が跳ねた。
「え? なに?」
「……動くなよ」
そう言って、髪に触れる。
柔らかい。
指先に触れるその感触だけで、自分の体温が上がるのがわかる。
すぐ取れるはずの綿毛を、なぜかうまく摘めなかった。
「もしかして、虫!?」
「いや……これ、ついてた」
俺の指の間にあるたんぽぽの綿毛を見せると。
「なんだ……びっくりしたぁ」
彼女はほっとしたように息を吐いて、目元をゆるめた。
ほんの少し笑っただけなのに、その顔から目が離せなくなる。
(……その顔は、ずるいだろ)
心臓がうるさい。
こいつが笑うだけで、どうしようもないくらい好きだって思い知らされる。
この顔を、五条先生にも見せているんだろうか。
俺だけが見ていたい。
そんな身勝手なことばかり考えてしまう。
ふと、釘崎が任務帰りの車で流していた曲を思い出した。
「これいいのよね」とか言って、勝手に音量を上げていたやつだ。
興味なんてなかったのに、何度も聴かされれば嫌でも覚えてしまった。
たしか、たんぽぽの綿毛に願いをかける歌だった。
――あなたが、私のものになりますようにって。