合同リレー作品集【鬼滅・呪術・ヒロアカ・WB 他】
第5章 お題小説 花モチーフの歌 + α
しばらくすると、ギターの音が小さくなっていく。
最後のコードが聞こえて、曲が終わってしまった。
繋がっていたものが切れて、地上に戻らされたみたい。
それなのに、まだ……このままでいたいって思ってしまう。
だけど、これ以上触れていたら……
自分の中だけにしまっておいた気持ちが先生にばれてしまいそう。
重なっていた指を、先生が起きないようにそっと離す。
急いでイヤホンを元の場所に戻そうとした時、宙で手が止まった。
(いけないって、わかってるのに)
先生が気づくことはないけど。
私がここにいたってこと、ほんのわずかでも残したくて。
テーブルではなく、先生の手のひらの中にイヤホンを置いた。
それから、逃げるように談話室を飛び出した。
「くくっ……」
あの子が部屋を出て行った後、耐えきれなくて笑ってしまった。
あんな顔して近づかれたら、寝たふりくらいしかできないじゃん。
あのまま指を絡めて、僕の腕の中へ閉じ込めたら……どんな顔をしただろうか。
顔を赤くして困った顔のまま固まるあの子を、眺めるのも悪くなかったかも。
でも――そんなことしたら、あの子は二度と僕に近寄ってこないだろう。
まあ、我慢したおかげで面白いものが見れたけど。
「かわいいことしてくれるよね」
手の中のイヤホンを、指先でそっと弄ぶ。
ついさっきまであの子が触れていたせいか、妙に熱が残っている気がした。
それを自分の耳に戻して、もう一度曲を流す。
もともとは、昔観た映画の主題歌だった。
なんとなく耳に残って、それ以来たまに聴き返していただけの曲。
なのに今は笑えるくらい、僕の気持ちそのままに聞こえる。
誰にもわかってもらえなくていい。
どうせ、誰にもわからないから。
それでも、たった一人だけには本当の自分を見つけてほしい――そんな、どうしようもなく身勝手な歌。
彼女はこのあと、この曲について調べるだろう。
それで今日のことを思い出して、眠れなくなればいい。
僕のことばっかり考えて、困ればいい。
それを想像したら、口元が勝手に弛んでいくのを感じた。
「……早く気づいてよ。次は、指を重ねるだけじゃ済まないから」
──「手のひらの中のアイリス」 Fin.