合同リレー作品集【鬼滅・呪術・ヒロアカ・WB 他】
第5章 お題小説 花モチーフの歌 + α
私がそう言うと、殊現様は変な顔をしていました。
「…楓は俺が泣いている姿が好きなのか?」
突拍子もない殊現様の言葉に、今度は私の方が間の抜けた顔をしてしまいました。
「…いいえ。私は殊現様の笑った顔が大好きです。」
私がそう言うと、殊現様は安心したように胸を撫で下ろしていました。
「…だけど殊現様は、私の泣き顔がお好きなようで…。」
私がそう呟くと、殊現様はやっと先程までの自分の行いを思い出したようです。
殊現様は少しだけ気まずそうに目を逸らしました。
そして誤魔化すように、露草の花弁に触れたのです。
「……泣かせたいわけじゃない。ただ……。」
その先の言葉を、殊現様は言いませんでした。
私はその言葉を待たずに、器の中の露草に目を落としました。
小さな花は、静かに揺れていました。
朝露を抱えるように。
迷いを抱えたままでも、それでも、そこに咲いているのです。
「……綺麗ですね。」
私がそう言うと、殊現様は何も言わずに、ただ私の手を取りました。
それは強くもなく、弱くもなく。ただ、離さないように。
誰にも気づかれなくても、それでも確かに、そこに咲いているものがあるのだと。
私は、そう思いました。
ー完ー