第10章 初めてのインターハイ予選
「”落ちた強豪・飛べない烏”」
体育館に入るや否や、耳に飛び込んでくる嫌なワード。
その辺の弱小校より話題にあがるのは、過去の栄光のせいだ。
「飛べない?何ですって?ん?」
よその高校生が発した不名誉な言葉にすかさず反応する龍先輩。
怖いものなし過ぎる。
「コラ行くぞ!・・・スミマセン」
「あっ、イエ」
大地先輩が龍先輩をすぐに回収して、他校生に謝る。
流石パパ…。
黒いユニフォームも相まってか、変に視線を感じる。
飛び交っているのは旭先輩の、おそらく勘違いによる悪い噂や、中学時代リベロとして活躍していた夕先輩の話題。
同じく注目を浴びていた飛雄の”あだ名”まで。
そしてさらに———
「かんわい」
「声かけてみろよ」
潔子先輩の危険を察知!
と同時に怪しい動きをしだす龍先輩と夕先輩。
「やめなさい!」
潔子先輩に叩かれても何故か嬉しそうな二人ももう見慣れた。
「…あいつも選手か?」
「男?女子じゃねーの?」
「すげぇきれーな顔してんなぁ」
…あたしのことか?
男か女かわからないってのはあたしの事だな。うん。
あとあたしの顔はやっぱり一部の層からは需要あるんだ。
「何にやけてんの?性別不詳マネージャーサン」
「はっ!うるさい蛍!」
「鈴も目立ってるみたいだね」
「…選手だと思われてることに解せない」
「仕方ないんじゃない?」
返す言葉もございません。
折角綺麗というワードにそわついていたのに、蛍のせいですべてがパァだ。
「じゃあ、あたしは二階に行きますね」
「ああ。応援頼むな」
「任せてください!」
沈んだ気分を奮い立たせて大地先輩に声をかける。
大会中、ベンチにいることができるるマネージャーは一人までなのだ。
あたしは応援幕を抱えて、二階席へと向かった。