第2章 Episode 00
その年の壁外調査を終えてから、調査兵団では大きな人事命令が下された。先の壁外調査では50人を超える犠牲者を出し、新兵含め調査兵団の三分の一を失う大きな損失が生まれてしまったのだ。その中には分隊を率いまとめる数人の分隊長の名も連ねられており、調査後は新しい部隊編成の組成が急務となった。
その年の末、エルヴィン・スミスは第4分隊の分隊長へと抜擢された。以前からその冷静な判断力や優秀さを買われ兵団の昇進候補者のリストに名を載せてはいたが、何より先の壁外調査ではエルヴィンの班からの死傷者は出ていない。兵団の変革が求められる時期に差し掛かり、彼のその手腕が兵団上層部にも評価されたのだ。
彼が分隊長となり欠員となった旧エルヴィン班の班長には、エミリーが推され就くこととなった。彼女を真っ先に推薦したのは他でもない、エルヴィンだ。他の班員も全員一致で彼女の班長就任に同意し、数ヶ月の引き継ぎと訓練を重ねた後に、新体制での壁外調査に望むこととなった。
「_訓練はこれで終了する。各自明日の壁外調査に向けて準備を怠らないこと。以上、解散!!」
「「はい!!」」
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「エミリーー、もうすっかり班長の風格が板について来ちゃったねぇ」
「スーザン...!そうやって茶化さないでよ。ただでさえ誰かの上に立つ仕事なんて、私には向いてないのに....」
「そんなことないよ?褒めてるんだよ?」
エミリーの親友スーザンも、エミリーが指揮を執る班のメンバーとして班に残った。彼女にも別の班の班長を任される打診はされていたが、彼女は親友のエミリーを側で支え続けることを選んだ。今だって、自信なさげに話すエミリーを勇気づけている。