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露花の恋【進撃の巨人】

第1章 Episode 01



突然後ろから声をかけられたかと思い振り返ると、そこには先程まで団長と話をしていたエルヴィンが立っていた。彼はエミリーとは対照的に、顔色をピクリとも変えず普段通りの動きを見せている。

「エミリー、撤退の命令が出た。予定より早いが、明日には壁内に帰還だ。準備してくれ」
「っ...え、えぇ」
「...」
「リヴァイ 、お前もだ。ここからは本隊と合流し、中央左で馬を進めろ」
「...了解だ」

今回の壁外調査は損害が大きく、早めの撤退との判断に至った。既に2日間で20体以上の巨人と遭遇し、その半分以上をリヴァイが討伐している。改めてリヴァイという人物の実力を兵団中に示し、そして「巨人とできるだけ遭遇しない」戦術の必要性を皆が思い知ることとなった。エルヴィンは淡々とその事実を2人に伝えると、直ぐにその準備に取り掛かる様指示を出した。

「....おい、エルヴィン。ちょっと待て」
「なんだ」
「エミリーがさっきから具合が悪いらしい。ここより離れた場所の空気を少し吸わせてやれ」
「....」

指示だけ出すと直ぐに団長の元へ戻ろうとするエルヴィンに、リヴァイはそう話を持ちかける。エルヴィンとて、こんなに顔色の悪いエミリーの様子に気づかないほど鈍い男ではないだろう。しかしエルヴィンは少し黙った後、彼女の方を見ることもなくリヴァイに言葉を返す。

「エミリーは大丈夫だ。リヴァイ、お前も早く撤退の準備に取り掛かれ」
「....」
「...エミリー、行くぞ」
「っ...了解_」

それはリヴァイが初めて抱いた違和感、心のざわつきだった。いや、初めて会った時からあの2人の関係性に心のどこかで疑問を持っていたのかもしれない。リヴァイはこの瞬間、その疑問を確信に変えた。しかし今自分達がいるここは、巨人が無数に存在する壁外だ。あくまで皆自分達の命を守るのに精一杯で、リヴァイとてこれ以上この件に踏み込む気もない。それ以上はリヴァイも言葉を返さなかった。

その日の翌日。朝方に壁内に帰還した調査兵団は、成果ではなく数十の遺体だけを持ち帰ったことに市民から非難の声を浴びせられる。体は疲れ果て、心ももう限界だ。いつか巨人からこの世界を取り戻すことはできるのか。その希望をいつまでも持つことができるのか。調査兵は皆、その思いを胸にウォール・マリアの地を踏むのだった。
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