第1章 Episode 01
「団長の許可は既に得ている。君が気にかける必要はない」
「けれどっ...!そんなのあんまりだわ。せめて次回の壁外調査からに...」
「それだと君にさらに負担を掛けることになる。次の壁外調査はいつになるか分からないのだから」
「そんなのどうだって...._」
その時ふと、廊下の灯火が揺れているのが目に映った。風の吹かない屋内の部屋で、何故灯火が揺れるのか。エミリーの頭は、一瞬で判断を下す。
「_待って、誰かいる。誰っ....!」
「_」
「....行ったようだ。聞かれたか?」
「....いえ、ほんの少ししか此処には居なかったはず。全部は聞かれてない」
息を潜めて此処に居たのは、おそらくあの3人のうちの誰かだろう。全ては聞かれていないとはいえ、これでエルヴィンの主張が正当性を増した。いつまでも彼らを欺き続ける事はできない。殺られる前にこちらが手を打たなければならない。エミリーはもうそれ以上、エルヴィンに言葉をかける事はできなかった。
「決まりだな」
「.....」
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その後、エミリーはこの日のことをずっと後悔することになる。内地からウォールマリア領内の調査兵団宿舎に2日かけて辿り着いたエミリーには、その後すぐ、ファーランとイザベル、2人を含めた調査兵56名の訃報が報せられた。