第1章 Episode 01
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「_...ヴィン。エルヴィン!!どういうこと、彼らを壁外に連れて行くって...!」
「エミリーか。もう君の耳に入っているとは、会議にいたメンバーの情報管理にも気をつけないといけないな」
それは調査兵団が壁外に赴く一週間前。議会の審議が通り、壁外調査に向けた会議にエルヴィンが出席した夜のことだった。会議を終えて執務室に向かおうと歩くエルヴィンを呼び止めたのは、彼の補佐官であるエミリーだった。
「....フラゴンから聞いたの。私達が地下街から連れてきたあの3人、どう考えたってまだ壁外へ連れて行くには早すぎるわ」
エミリーはエルヴィンから咎められるかのような視線を向けられ、気まずそうにそう答える。いつもはエミリーが知っておくべき情報は、全てエルヴィンが事前に伝えている。エルヴィンがエミリーに3人が壁外調査に参加することを教えていなかったという事は、彼女はそのことを知らないままでよかったということなのだ。しかし、知ってしまった限りはエミリーも見て見ぬふりはできない。普段から上官に歯向かう経験なんて全くない彼女は、怖気付きながらも懸命に自分の考えを訴えていた。
「君のやるべきことは証拠書類の管理とただ彼らの監視をすることだけだ。他の隊への干渉は含まれていない」
「けどっ....、」
エルヴィンの下す決断は、いつだってあるべき方向へと兵士達を率いてきた。それが賭け事であっても、エミリーはそう信じてここまで彼について来たのだ。エミリー自身も、そう簡単には彼の言葉を否定する事はできない。