第23章 Amazing Grace
目を開けると、見慣れたようで少し違う風景。
壁紙の柄が微かに違うのか、あるいは光の具合のせいなのか。
じっと見ていたら、天井が歪んで揺れた。
カーテンの隙間から差し込む朝日が、床に細い影を落としている。
少し外は風が強いのか、カーテンが揺れて天井の柄がまた歪んで揺れている。
身じろぎすると、隣に眠る気配。
「…智…」
穏やかな寝息が、この部屋の静けさに溶け込んでいた。
その音を確かめた瞬間、なぜだか胸の奥に「生きていてよかった」という感情が、熱のように広がっていった。
「生きて…いく…」
俺は、生きていく。
この人の隣を、もう離れない。
それが俺の生きる道──
ゆっくりと身体を起こす。
まだ全身に鉛でも入っているように重い。
「ん…」
それを振り払うように伸びをすると、智が寝返りを打ち、薄目を開けて俺を見上げた。
「起きてたの?」って小さく笑うと、智の目尻がゆるんだ。
俺は笑い返して、震える手で智の頬を包んだ。
その手をそっと握り返してくれた掌は、温かく。
じんわりと俺の体温と溶け合っていく。
「おはよ」
「おはよ…なんか、食べれそう?」
「うん。パン粥がいいな」
「そっか」
安堵の笑みが浮かんだ。
ありがとう。
智……
回復は一歩ずつ。
今日はパン粥を残さず食べよう、そう思った。
この小さな選択が、智と生きていくということの始まりなのだと感じた。