第22章 1 John 1:9
俺が──
殺した
「翔、しっかりしろ」
最近なぜだか、こんな俺のところに毎日智が居る夢を見ている。
「おまえ医者になったんだろう?」
夢の中で智は俺に厳しい視線を送っている。
「医者…」
「そう。医者なんだろ?翔は…」
少しずつ、闇の中に居る智は俺に近づいてくる。
「なった…けど…」
「けど?なんだよ」
近づいてきて、智の手が俺の頬に触れる。
感触がリアルでびくっと体が震えるけど、その手のひらの温かさにすぐにこれが夢だってわかって、体の緊張は緩んだ。
「もう、辞めたんだ…」
「辞めた?」
そう。もう、辞めた。
俺が、殺したから──
「続けらんないよ…俺は、人を殺したから…」
「おまえが?殺した?」
智が悲しそうに眉を歪めた。
「死なせたんじゃなくて?医者なら、あることだろ?」
「違う…殺したんだ…」
涙が勝手に出てきて、止まらない。
能村さんの最後に見た顔が、頭から離れない。
「ごめんなさいっ…ごめんなさいっ…」
その顔が迫ってくる。
『櫻井先生、あなたのせいよ──』
夢の中で彼女はずっと俺を睨んでる。
あの時、無理に診察を勧めなければ。
生検なんかしなかったら。
能村さんと娘さんたちは、今でも笑ってたのに
「ごめん…」
ぶつっと、そこで夢は途絶えた。