第21章 Psalm 121:1-3
「捨てねえ…捨てられるわけねえってっ」
「じゃあどうするんだよ?櫻井の治療に全部付き合うってのかよ!?」
西島の手が俺の胸倉を掴んだ。
「これ以上傷ついたら、櫻井はもう生きちゃいられないかもしれないんだ。中途半端におまえが手を出すってことは、櫻井の死を意味してる。わかるか!?」
見たこともない真剣な表情の西島に圧倒されて、すぐには言葉が出てこなかった。
「死…?」
この期に及んで、俺は翔と自分の先行きを天秤に掛けていた。
雅紀のお陰で大野製作所のことで糸口が見つかりそうなのに、こんな時期に翔に掛かりきりで居られるのか。
それに、ここで翔の前に現れるのなら、この8年は一体何だったんだ。
一体何のために俺達は……
「やめとけ。おまえが関わっていい人間じゃねえ」
「……そんなこと、わかってる」
でも翔は、こんな俺を拾ってくれた。
傷の治療をしただけでなく、俺が家族を殺していないってことを思い出させてくれた。
そうだ。
俺の傷に、翔は寄り添ってくれたじゃないか。
「…やっぱ無理だ…」
西島の顔が更に険しいものになった。
「わかったなら、帰れ。後のことは俺と稲垣が預かるから…」