第21章 Psalm 121:1-3
血液検査の簡易的な結果がでるのは、少し時間が掛るということだった。
ここまで稲垣医師は俺達のこと根掘り葉掘りと聞いてくることはなかった。
おそらく西島がいまどういうことをやっているか知っていて、今までもこういうことに協力をしてきたんだろうということは、容易に想像がついた。
「受付に椅子がありますから、少しそちらで休まれては?」
「ありがとうございます…」
翔は今は目を閉じているから眠ったようだった。
「先輩。後でレントゲンも撮りたいので、今のうちに休んでおいてください。こんなところまで運転、お疲れだったでしょう?」
一体どこから来たと思ってるのか知らないが、やたらと労ってくれる。
「ああ、ありがとう。じゃあ、行くか」
診察室を出て裏口とは逆に進むと、狭い受付の待合スペースに長椅子がいくつか置いてある。玄関ドアの上にある非常口の明かりが、黒レザーの長椅子をぼんやりと緑色に染めている。
廊下に自動販売機があったから、飲み物を買ってきて長椅子で休ませて貰った。
「智」
「ん?」
「櫻井翔の治療、時間が必要になると思う」
「…ああ」
「TJ病院でなにがあったか、調べることはできるか?」
「今、お願いしてる」
「ほう…」
「ロートルのじいさんが調べてくれるってさ」
そういうと、西島はクスっと笑った。
「おまえ、よくロートルなんて言葉知ってるな」
「そのじいさんがよく言うんだ。自分のことロートルだって」