第20章 Romans5:3-4
綺麗な光の渦は夜の空を漆黒にはしなかった。
灰色に見える空は、光り輝く夜の街とは対称的になんだか悲しい感じがした。
「これからどうしようか…」
そのとき強い風が吹き付けてきて、思わず後ずさった。
「びっくりした…」
風の吹く音が大きく聞こえる。
どうやらこれから天気が悪くなりそうだ。
「帰ろ…」
天気が悪くなる前に帰ってしまおう。
最後にもう一度、仕切り板まで歩いた。
どうしようか迷ったが、翔の部屋の方を覗き込んでみた。
「…え…?」
ベランダに、さっき見たときはなかった白いものが落ちてる。一瞬洗濯物かと思ったけど、翔は洗濯物はすべて乾燥機にかけているはずだ。
「…翔?」
呼びかけたが、その白いものは動かない。
スリッパを脱ぎ捨てて仕切り板によじ登ってみた。
寝室の窓が開いていて中からレースカーテンが風に揺られてヒラヒラと出ていた。
テーブルと椅子のセットの傍らに人が倒れているのが見えた。
「翔!!」
もう何も考えられなかった。
仕切り板に足を乗せ、翔の家のベランダに飛び降りた。
転びそうになりながら近づくと倒れている人を抱き起こした。
「翔っ…翔っ!!」
顔を見て、戦慄した。
8年ぶりに見る顔はげっそりと窶れていて。
体も骨ばかりになってる。
「どうしたんだよ…翔…」
病院を辞めてしまったことを甘く見ていた。
きっと翔の身にとんでもないことが起こったんだ。
「翔っ…!」
閉じられた目は、開かない。
抱いた体の軽さに、涙が出た。