第20章 Romans5:3-4
「そんな顔するなよ。それフランスのワイナリーのジュースなんだぞ?仕入れ値、めっちゃ高いんだからな」
「それは、ありがとう」
そのありがたいぶどうジュースをまたごくっと飲むと、ロックグラスをカウンターに置いた。
そのグラスの表面に、後方に置いてあるダーツの筐体のライトが反射してる。
カウンターの後ろは狭いながらも一組だけダーツができるスペースがある。
ダーツの筐体の横の壁沿いには古いジュークボックスが置いてある。
金を入れたら今でも音楽は鳴るそうだ。
70年代のオールド・ロックが入ってる。
あとはカウンターの他にはテーブル席が2つほどジュークボックスとは反対側の壁にへばりつくように用意されてる、小さな店内だ。
雅紀は苦笑いすると、タバコを取って灰を落とし口に咥えた。
深く吸って吐き出すと灰皿にまた灰を落とした。
「俺は知らないよ?爺さんがそんな物件借りてたなんて…」
「嘘つけ」
「嘘じゃないって…」
また笑うと、今度はタバコをもみ消した。
「じゃあなんで、爺さんが”格安”で借りれるんだよ」
そんなの、雅紀くらいしか思いつかない。
松岡の爺さんは長年、殺し屋(爺さんは決して自分を暗殺者って呼ばない)として暮らしていたんだ。
エージェントである雅紀や数人の暗殺者以外に接点のある人間なんていないはずだ。
居ても、どんな迷惑がかかるかわからないからその人達とは距離を置いているはず。