第10章 Jeremiah8:4
出口まで見送ると、父親が顎で俺を呼んだ。
「だめだった。警察が来るから、俺は会場には戻れない」
「わかりました」
「母さんを会場に戻すから、あとは叔父さんたちと母さんでなんとかする。おまえは舞と修を頼む」
叔父は父親の弟で副院長をしている。
担架と一緒に会場を出ていったが、この後すぐ戻ってくるんだろう。
「食事をしたら部屋に戻るよう言っておきました」
「そうか。なら来るか?」
控室に運んだあの人の、救命措置を続けるんだろう。
だめだったとは言っているが、まだAEDを使ったわけじゃないからそれもやるのかもしれない。
「行きます」
急いで控室に行くと、椅子やソファはずらされて男性は床に寝かされていた。
父親がいくつか指示を出すと、半数の人は会場に戻っていった。
その中には母親も居た。
母親はここの片付けを指示していたんだろう。
俺に気づくと口をきゅっと引き結んで頷いて、会場に戻っていった。
入れ替わりでホテルの人が何人か入ってきた。
AEDのオレンジ色のバッグを持った人も居た。
「失礼致します。支配人でございます。櫻井様、とんだことで…」
「ああ。すまんな」
先程心臓マッサージをしていた救急の診療部長が、今度はぎこちなくAEDを作動させている。
「翔、良く見ておきなさい」
「はい」
処置を見させてもらっていると、支配人と父親の会話が聞こえて来た。