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花水木が咲く頃に ꕥヒロアカꕥ

第1章 𝔸𝕗𝕣𝕚𝕔𝕒𝕟 𝕔𝕠𝕣𝕟 𝕝𝕚𝕝𝕪





『ここって…雄英?』


紛れもなくこの立派な建物は雄英だ
余りにも広い敷地面積に入学試験のとき目が回ったのを覚えてる
口の閉じない私の顔を見てホークスはフッと息を漏らす


「ど?緊張抜けた?」

『…うん、なんかやる気漲ってきたかも!』

「それは良かった」


ホークスと私は長い間空から雄英を見下ろしていた
多分暫くお互い動かなかったのはこれで、もう最後だって分かってたから

私は雄英に行って、こんな風にホークスと気軽には会えなくなる
気付かぬ内に肩に触れている手に力を込めていた
「帰りたくない」
その言葉が必死に口から出ないようにした
きっと困らせてしまうから


「…ねぇ ひかりちゃん、オレと離れるの寂しい?」

恐る恐る下げていた顔を上げホークスと視線を交わす
いつもみたいに微笑んでるけど、哀愁を漂よわせる切ない笑みだった
胸が痛む、なんでこんなに苦しくなるの

私はこの気持ちを知ってる
けど分からない
なんで知ってるの


『…うん寂しい…出来ればずっとっ』

「一緒にいたい」また最後まで言葉が出てこない
言っちゃいけいないと体がまるで覚えてるみたいだった
震える体を抑えるように唇をきつく結ぶ
大好きなホークスとの別れがこんなのでいいはずない
もっと、他に何か言うことがあるはずだよ



『…この五年間ずっと一緒にいてくれた
私に数え切れない多くのものをくれた』

それは目に見えないものも


『ホークスに…逢えなかったらあの頃から一歩も前に進めなかった…私の人生の見え方が変わって、道が出来たの!

大袈裟だけど…生きる意味をくれた。』


他にもまだ沢山あるの
私は彼との思い出に何度も救われてきた

いつも一緒にいてくれた
傍に…いてくれた

溢れる涙を一拭いして、あの時みたいに自然と笑顔になる


『クリスマスイブ、ホークスと出会えて嬉しかった、私を助けてくれてありがとう』


ずっと言えなかったあの日のお礼
今更言うのも気恥ずかしくタイミングを見つけられずにいた
胸のわだかまりがスーッと溶けたような感覚が広がる

ごめんなさい、じゃなくてありがとう、って言いたかったのずっと


そんな私の言葉にホークスは大きく目を見開き
私を抱える手に力が籠もった気がした


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