第1章 𝔸𝕗𝕣𝕚𝕔𝕒𝕟 𝕔𝕠𝕣𝕟 𝕝𝕚𝕝𝕪
ヒーローを目指すことになるなんて思わなかった
あの日から雄英に行くために必死に勉強して、自分の個性を研究して磨いた
『…全部ホークスのせいだもん』
ホークスのおかげで私は夢も目標も手に出来た
嫌いだった自分の個性も好きと言えるくらいにはなった
……全部…ホークスのおかげなの
素直になれない自分にモヤッとしながらホークスを上目で見ると彼は相変わらず優しい笑顔をしていた
「ハハ… ひかりちゃん髪伸びたよね」
話逸らされた、と思いつつも渋々頷く
「初めて会ったときなんてこんくらいじゃなかった?」
ホークスは自分の顎の下で手を横に振る
胸下まで垂れている自身の髪の毛に視線を移す
「……どんどん綺麗になっていくから気が気じゃなかった」
その言葉に思わず顔を上げそうになるが留まった。だってホークスの手が伸び、私の髪の毛に触れたから。体の内側で鼓動が激しくなり息苦しさが私を襲う
「 ひかりちゃん絶対向こうでモテモテだよ
告白されまくって ひかりちゃん優しいから断れないよね、けどオレが嫌だから断ってよ」
『私モテないよ、告白なんてされたことないもん』
「それはオレがいたからだよ
でも雄英にオレはいないでしょ」
ホークスがいたからってどういう意味なのだろうか
彼の手は私の耳に髪をかけ離れていき今度は私に向かって手を差し出す
「おいで」
手を置けば強い力で引っ張られ、体が手すりの外側に投げ出される
向い合わせの形になり、ホークスの手が私の両太ももの後ろ辺りを腕でがっちりホールドする
不安定な体を支えるように彼の肩に手を置く
その状態のまま空へと上昇していく
風圧には今だになれず目を瞑ってしまう
風が心地良いくらい緩やかになり目を開け下を覗く
対して時間が経っていないのにも関わらずもう知らない町並みだった
『どこへ行くの?』
「さぁ、着いてからのお楽しみ」