第1章 𝔸𝕗𝕣𝕚𝕔𝕒𝕟 𝕔𝕠𝕣𝕟 𝕝𝕚𝕝𝕪
《ホークスside》
花が咲いたような可憐な笑顔に目を奪われる
あぁ、ほんとなんで行っちゃうんだよ
ひかりちゃんがここを離れていくくらいならいっそあの日会わないほうが良かった
それでもオレはどんな手を使ってでも ひかりちゃんをみつけるだろうから
オレの手が届かないとこに行くな
なんてオレは言える立場じゃない
分かってる
「…ホークス?」
何も答えないオレに異変を感じたのか ひかりちゃんが顔を覗き込んでくる。生憎皮をかぶるのは得意なもんで
『どういたしまして。けどこんな日に言う?オレがしんみりしたの苦手だって知ってるでしょ』
すると ひかりちゃんは「いつものホークスだ」と可笑しそうに肩を揺らす
オレだって ひかりちゃんに会えて嬉しかった
キミがオレの前に現れたことがオレにとっての一生の幸運だと思ってる
と心のなかで返事をする
『そろそろ戻ろう』
そう声を掛ければ項垂れる子犬みたいにしゅんとし、不本意そうに頷く
だからそういうとこ
調子狂うからダメだって
あとほんの少しだけ嘘を吐かせてよ
なんとか宥めようとしたとき
「…うん!帰ろう!私このままじゃダメだ」
素っ頓狂な声が思わず出そうになったが堪える
なんだ急に…あっけらかんとしてるオレを無視して ひかりちゃんは続ける
「私、今までこうやって甘えてたんだね
ホークスがいるからって心のどこかで安心しきってた」
そんな事か、と内心ホッとしてみせる。 ひかりちゃんは抜けてるとこあるからまたなんかややこしいことに迷走してんのかと思ったよ
「雄英にはホークスはいないもんね
今度から私一人で何かもこなさなきゃ
だからホークスに頼るのはもう終わり」
今度こそらしくなく声が漏れる
こんなんなら下らないことのほうがよっぽどましだ
「ホークス、今までありがとう
私雄英で頑張ってくるから!」
その瞬間オレの中で何かがヒビ割れた音がした
ひかりちゃんはオレと過ごした日々を過去にすると言ってる。大したことじゃない変わるのは当たり前だろ
なのにほら、こんなに掻き乱される
表情に出す訳にはいかないから爪が食い込むくらい強く拳を握り締める
決めただろ今じゃない、オレは…
『…今までとか言うなよッ』