第4章 𝕂𝕒𝕝𝕒𝕟𝕔𝕙𝕠𝕖 𝕦𝕟𝕚𝕗𝕝𝕠𝕣𝕒
私は知らなかったんだ
轟くんが自身の個性を語らない理由がお父さんにあったことを
「関係ねぇだろ」
それは低く暗いドスの効いた声だった
たった一言に怒りや哀しみ、複雑な感情が入り混じっていた
轟くんは私から顔を背け、繋いでいた手をスッと離す
一歩一歩足を進める彼に対して私はじっと立ち尽くしていた
誰にだって人に言いたくないことはある
彼が左手を使ったところを見たことがない
言いたくないから、閉じ込めたいから
思い出したくないから_______
わたしは轟くんを全然わかってないよ
「あー!!焦凍くんだぁー!偶然!」
その高らかな明るい声にハッとする。気付けば轟くんが他校の制服を纏った女子生徒に囲まれ黄色歓喜の声を浴びていた
轟くんの知り合い、かな
と思った矢先に彼は冷たく言い放つ
「誰だアンタら」
私のせいで極めて機嫌の悪い轟くんは彼女たちに冷ややかな視線を寄越す。けれど女の子達は、滅気ずに…というか全く気にも留めてないと言わんばかりに距離を詰める
「えーひどーい、昨日もアピったのに覚えてくれてないわけ??」
「焦凍くん難攻不落すぎぃ〜〜
まぁ、こんだけイケメンだと納得いくけどさぁ」
女の子達はいかにもキラキラしていて
具体的には説明できないけどざっ女子高生という感じだった
昨日も…私が彼を避けてる間、彼女達は轟くんとの距離を詰めていたんだ。名前…呼んでる…し
これ以上見てるのが無性に辛くて惨めで、私は背を向ける
聞きたくない、逃げたい
私は轟くんを安心させられない
彼女達のほうがきっと_____
「ねぇ、焦凍くんの家に行きたぁい
お父さんエンデヴァーさんなんでしょお?」
゛そ、そう言えば轟くんのお父さんはエンデヴァーさんなんだね゛
「やっぱ勝ち組の家系はうちらと違う〜〜
個性もお父さん譲りらしいじゃん、だから相当強いんでしょお?」
一緒だ
何もわかってない
「超イケメンで個性最強とか恵まれてるーー
焦凍くんとは生まれた時からなんでも持ってるよねぇ」
いやだ
違うんだよ私はそんなことが言いたかったわけじゃないの
轟くんはそこにいるのに
この人達も、私も
まだ彼を見ようとしてない